田中さんの作品は少しいびつで、端っこがクルンとまるまっていたりします。そこがすごくキュートで、おもわず手にとって感触を確かめてしまう匙たちです。
田中さんはお会いするとすごく華奢な女性ですが、右手は筋肉でぴしっとしまっていて、あぁ 毎日金属をたたいて、たたいているんだなぁ、と鍛金作家としての暮らしを垣間見る気がします。
金属板は見た目均一なものでも、たたいていると板になるまでの工程でできたクセのようなものが出てきて、そのクセのようなものと会話しながら、曲がりたい方向に曲げたり、たたいてのばしたりして作品になっていくのだそうです。金属も元々は地中の鉱石から採ったものだから、それぞれ個性があって、“たたく=コミニュケーション”と言う彼女は金槌で金属をたたいて、特徴を確かめながら作るのがとにかく好きなのだそうです。
そして、その作品(金属)が生活の中になじんでくれたらとてもうれしいと云います。茶葉をすくう時、煮豆をすくう時、豊かな気持ちになれる匙たちです。
|